新型インフルエンザについて
新型インフルエンザのニュースが連日あちこちで報じられていますが、とうとう国内でのヒトーヒト感染例が明らかになりましたね。明らかに・・・というのは、このウィルスが軽症で、通常の季節性インフルエンザと区別がつかないことがあるために、気付かれずに発症・治癒してしまった患者さんもずいぶんいるのではと予想されているためです。発熱のあるなしを基準にした水際阻止作戦では潜伏期だと当然見逃しはあるはずですし、そもそもメキシコ・北米でもいつ頃から発生していたのかすら不明確です。
今年の季節性インフルエンザの流行状況はA型優位だったようで、それも例年よりだいぶ遅くまで流行していました。関西では4月になってからも休校になるほどの流行もあっていたようです。それが新型だったのかどうか、今となっては調べようがありません。ですから、今後の対策としては「水際阻止」や「国内感染初期」ではなく、より幅広い対策が必要だといわれています。「水際阻止」や「国内感染初期」では、まだ近所では見つかっていないから大丈夫、と考えがちですが、国内のインフルエンザ全てが検査されているわけではありませんので、いつどこでウィルスと接触するかわかりません。また、気付かない内に感染して、潜伏期のうちにウィルスをばらまいている可能性すらあります。
いま大切なことは、咳エチケットと手洗い。マスクについては一般の布製マスクによる予防効果はないといわれていますが、仮に自分が潜伏期である場合、くしゃみで飛散するウィルスをいくぶんは減らせるのではないかと思います。これについては科学的根拠はありませんが、エアロゾルとして飛散するぶんは防げなくても、唾液の大きな飛沫をとめることができれば少しはちがうのではないかと。つまり、自分が感染することを予防するのではなく、他人を感染させることを多少は防げるのではないかということです。
いざ発熱したらどうするかということですが、これにはニューヨーク市長の「手を頻繁に洗い、せきやくしゃみをするときは、せきエチケットを守りましょう。なるべく自宅にいるようにしてください。よほど具合が悪いのでなければ病院へ行かないように。すべての症状が消えてから24時間は、仕事にもどらないでください」という発言が医学的にも妥当ではないかと。厚生労働省のいう、「手を頻繁に洗い、せきやくしゃみをするときは、せきエチケットを守りましょう。外出時にはマスクをし、帰宅したらうがいをしましょう。なるべく自宅に2週間分の備蓄をしてください。インフルエンザの疑いがあれば、まず発熱相談センターに電話をし、発熱外来のある病院へ行くように(新型であれば隔離入院になります)」というのはもっと毒性の高いウィルスへの対策ではないでしょうか。ただし、何らかの基礎疾患(心臓や呼吸器の持病、糖尿病や免疫系の病気など)がある人は重症化しやすいので直ちに受診する必要があります。
今回の「弱毒」ウィルスに過剰対応してタミフルの備蓄を使い果たすか、耐性ウィルスを誘導してしまった後に、秋以降に変異した「強毒」ウィルスに対峙することにならないか、それが心配されます。